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薬物の吸収について②(解離型・非解離型とは)

koro

解離型=水溶性、非解離型=脂溶性

ころちゃん先生:さて、細胞膜はリン脂質の二重層でできていますね。それにより、非解離(非イオン)型で脂溶性の薬物は、受動拡散という過程で容易に細胞膜を通過して細胞内に入ることができます。一方、解離型(イオン型)で水溶性の薬物は細胞膜を通過しにくいです。したがって、解離型と非解離型の比率は、細胞内で作用する薬物に大きな影響を与えます。

生徒さん:そうなんですね。では、薬物の解離型と非解離型の割合はどうやって決まるんですか?

Henderson-Hasselbalchの式

ころちゃん先生:薬物の解離型と非解離型の割合は、Henderson-Hasselbalchの式によって決定されます。例えば、解離して陽イオンになる塩基性の薬物の場合、以下の式が適用されます。

pKa – pH = log (解離型モル数 / 非解離型モル数)

この式は、薬物のpKa(解離定数)と溶液のpHによって、解離型と非解離型の薬物の比率を示しています。

生徒さん:なるほど!Henderson-Hasselbalchの式を使って、解離型と非解離型の割合を求めることができるんですね。

でも、解離型と非解離型の比率というところが、よくわかりません。
例え話を用いて、優しく解説していただけますか?

解離型と非解離型の比率

ころちゃん先生:もちろんです!解離型と非解離型の比率について、例え話を使って説明しましょう。

解離型と非解離型の薬物を、パーティーに参加する人々に例えてみましょう。

このパーティーには、二種類の部屋があります。

ひとつは「解離型部屋」、もうひとつは「非解離型部屋」です。
それぞれの部屋には、ドアがあって、中に入ることができます。

解離型の人たちは、水になじみやすい特徴を持っており、イオンの状態で存在しています。
一方、非解離型の人たちは、脂になじみやすく、イオンではない状態で存在しています。

さて、このパーティーの目的は、出口である細胞膜を通過して、細胞の中に入ることです。

しかし、この出口は、非解離型の人たち(脂になじみやすい)にしか通れません。
つまり、解離型の人たちは、非解離型の部屋に移動しないと、細胞の中に入ることができません。

このとき、Henderson-Hasselbalchの式が登場します。この式は、解離型部屋と非解離型部屋の人々の比率を決定する鍵となる情報を提供します。
pKaとpHを使って、どの程度の人々が解離型部屋にいて、どの程度の人々が非解離型部屋にいるのかがわかるのです。

結局、解離型と非解離型の比率が適切であれば、より多くの人々が細胞膜を通過して、細胞の中に入ることができます。これが、薬物の効果を最大限に発揮させるための重要なポイントとなります。

全て非解離型の薬物は存在しないのか?

生徒さん:うーん、、。どうして、薬物によって解離型と非解離型の比率が異なるのでしょうか?
みんな非解離型の薬物というのは存在しないのですか?

ころちゃん先生:薬物を、それぞれ異なる色の風船に例えてみましょう。

風船にはいろいろな色がありますが、それぞれの色によって空気を含む割合が異なると仮定します。

解離型と非解離型の比率は、風船の色によって決まる空気の割合に似ています。

例えば、ある薬物(風船)が青色の場合、解離型(空気を含む)が多く、非解離型(空気を含まない)が少ないかもしれません。
  風船が青色=解離型>非解離型

逆に、別の薬物(風船)が赤色の場合、解離型(空気を含む)が少なく、非解離型(空気を含まない)が多いかもしれません。
  風船が赤色=解離型<非解離型
  

つまり、薬物の種類(風船の色)によって、解離型と非解離型の比率が異なるのです。

それでは、どうしてみんな非解離型の薬物は存在しないのでしょうか?

実は、完全に非解離型の薬物は稀です。

なぜなら、ほとんどの薬物は弱酸性または弱塩基性であり、水溶液中では解離型と非解離型の両方が存在するからです。ただし、薬物によっては非解離型が非常に高い割合を占めるものもあります。

生徒さん:ほとんどの薬物が、弱酸性か弱塩基性であることと、解離型と非解離型であることの関連性が、まだ理解できません。例え話などを用いて解説していただけますか?

ころちゃん先生:もちろんです!弱酸性や弱塩基性の薬物と、解離型と非解離型の関連性について、例え話を使って解説してみますね!

薬物を、飲み物に例えてみましょう。

ある飲み物がレモネードで、酸味があることを考えてみてください。レモネードは酸性ですが、その酸味は弱いため、レモネードは弱酸性と言えます。

同様に、別の飲み物が牛乳で、若干の塩基性を持つことを考えてみてください。牛乳は塩基性ですが、その塩基性は弱いため、牛乳は弱塩基性と言えます。

次に、解離型と非解離型の存在について考えます。

レモネードの場合、水に溶けると、酸性物質(解離型)と水(非解離型)が混ざり合います。

牛乳も同様に、水に溶けると、塩基性物質(解離型)と水(非解離型)が混ざり合います。

このように、弱酸性の薬物は酸性物質と水が混ざり合い、弱塩基性の薬物は塩基性物質と水が混ざり合い、それぞれ解離型と非解離型の形で存在するのです。

生徒さん:なるほど!飲み物の例えを使うと、弱酸性や弱塩基性の薬物と、解離型と非解離型の関連性が理解できます。

でも、どうして完全に非解離型の割合が高い薬物が存在するのでしょうか??

ころちゃん先生:良い質問ですね!完全に非解離型の割合が高い薬物が存在する理由について説明しますね。

薬物の化学構造によって、酸性や塩基性の性質が決まります。ほとんどの薬物は、弱酸性または弱塩基性ですが、一部の薬物は、その構造が特殊であるため、解離がほとんど起こらないことがあります。

これを例え話で考えてみましょう。
薬物を、家の構造に例えます。ほとんどの家は、窓やドアがあって、空気が入りやすい構造になっています。これは、弱酸性または弱塩基性の薬物で、解離型と非解離型が存在する状態に似ています。

しかし、一部の家は、特別な設計で窓やドアが非常に少なく、空気がほとんど入らない構造になっています。このような家は、非解離型の割合が高い薬物に似ています。つまり、薬物の化学構造が特殊であるため、解離がほとんど起こらず、非解離型の割合が高い状態が存在するのです。

生徒さん:なるほど!家の構造の例えを使うと、非解離型の割合が高い薬物が存在する理由がよくわかります。先生、ありがとうございます!

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ころちゃん
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歯科医師・歯学博士
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